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「豊かなる日々 〜吉田拓郎、2003年の全軌跡〜」 (田家秀樹・著)

2003年、待望のビッグバンド(フルオーケストラ)ツアーを敢行した吉田拓郎のドキュメンタリー。
4月9日の肺がん摘出手術から、リハビリ、リハーサル、ツアー本番まで、こまめなインタビューと周辺取材をまとめた一冊。

著者は、長年拓郎を追い続けている音楽評論家の田家秀樹


◆吉田拓郎と瀬尾一三(バンドマスター、アレンジャー)の対談より
<抜粋要約>--------------------
・・・吉田拓郎と瀬尾一三が公の場でお互いの70年代について語り合ったのは初めてではないだろうか。拓郎はその頃の話を拒んでいたし、瀬尾は自分が表に出ることを良しとしない職業的な音楽家だった。

瀬尾「拓ちゃんもそうだけど、独学なんだよ。僕だって、音楽学校行ったわけじゃないし、楽器が出来るわけじゃない。先生だっていないんだから。耳で聞いたモノを頼りにっていう、それだけ」

吉田「よく生きてきたね、って人のこと言えないけど(笑)。だって、僕、アマチュアの時、ハーモニカホルダーって売ってると思わなかった。東京に来てからですよ、売ってるって知ったの。自分で作りましたからね。ハンガーみたいな針金を使って曲げるんですよ」

瀬尾「みんな我流だったね」

吉田「そう、我流でいいんだっていうことですよ。ボブ・ディランとビートルズが教えてくれたのはそういうことですよ。ビートルズは4人集まればこんなことが出来るよって。ボブ・ディランは1人で出来るよって教えてくれた。政治的なこととか哲学的なこととか何も教わってない。形だけ教わった。ギターを持ってここにハモニカホルダーをはめれば、1人でも出来ちゃうよということをディランが教えてくれて、ビートルズは男の子が4人集まれば何とかなっちゃう。4人でいいんだって。勇気づけられましたね。」
--------------------<抜粋要約>

◆レコーディングスタジオにて 〜スタッフとの会話
<抜粋要約>--------------------
「サラリーマンがMP3で英会話を聞いてるんですよ。」
話は、再びオーディオに戻っている。
「それ、入れるの手間かかりそうだね。でも何たって小さいからねえ」

拓郎と話した人間は、誰もがそんな日常会話の面白さに惹かれると言う。思いがけない話が、ちょっとした会話から次々と広がっていく奔放さ。それはラジオのトーク番組で聞けるのと変わらない。

「だって延長コードですらネットで買っちゃうんだよ。送料の方が高いんだ」
話のテーマは、ショッピングになっている。もうMP3の話がひとしきり盛り上がった後だ。

「電気店と文房具店には弱いね。もうホッチキスまで買っちゃう。知ってる?100ページ以上も留められる新製品とか、シースルーのホッチキスとかあるんだよ。100何枚束ねられるんだから。でもさ、普通100何枚も束ねるものないよね。そっか、古新聞あるよ。生ゴミ出す時に束ねる」

「それ、燃えないゴミになりませんか?」
誰かがそんな風に応じて笑いが起こる。ホッチキスの素材は不燃性だ。拓郎が中心になっている時に、周囲に笑いが絶えないのは、そういうやりとりがあるからでもある。

「でも、ホッチキスってどこからどこまでホッチで、どこからキスなのかな。誰か語源知ってる?」
「辞書が要りますね」
誰かがそう言うと、拓郎は「その辞書がまた、はまるんだよ」と受けて広がっていく。
「辞書いっぱい持ってるよ。新しいのが出るとすぐに買いたくなる」

「通販に向いてますよ。通販番組とかやりません?」
「そう、自分で”ジャパネット拓郎”とかやりたいよ。通販会社やりたいね。今日歌って駄目だったらそうするか。肺活量関係ないもん」
話が思いがけないところに落ち着くのは、ふっと冷静になったりする時だろう。

どうしてその話になったのだろう。後で思い出してもつじつまの合わないことがある。この日もそうだったのかもしれない。どういうわけか話題はピロリ菌に変わっていた。胃潰瘍を引き起こす原因と言われている虫だ。ピロリ菌というのはどういう虫なんだろう。そんな日常的な話が、拓郎の口に上がるとこんな話になる。

「虫がいてポコチン立ててくれればいいのにな。ありがたい虫がいてさ。ありがた虫とか、そういう虫がいいよな。今日、頼む、とか言うと虫がポコチンに入ってくれるの。その代わり、虫の好きなもの喰わないといけない」

「もう、ポコチンの代わりに動いてくれるわけよ。それなら蛇入れた方が早いか。でもポコチンに蛇が入っていたらすごいな」
「虫のおかげで元気です、とか言っちゃって。彼女も、今夜虫使ってよとか言ったりして。何だよ、お前、虫、気に入っちゃったのかって喧嘩になったりして」

自分の思いつきが膨らんでいく。そうやって嵐のような笑いを巻き起こしてからふっと沈黙する。
「ヴォーカルが、もう少し聞こえるといいかな」
さっきまでの陽気なトーンとは打って変わってシリアスな表情に切り替わっている。
--------------------<抜粋要約>

肺を5分の1切除したこと、
思ったように呼吸が出来ない、思ったように歌えない苦しさ。
拓郎の心境の話から、
1985つま恋オールナイトイベントのこと、
2003年ツアーの舞台裏(音楽の話も"少々")、
それから何気ない日常会話まで、
サイドストーリーを織りばめながら、この本は展開していく。

2003年ツアーの東京公演のチケットは、発売後たったの「15分」で完売したという。
昨年の倍の本数が組まれ、2年連続のビッグバンドツアーが決定した2004年。
「通常編成のツアーでは今年は歌う気がしない」
ビッグバンドツアーにかける意気込みは半端じゃない。


「豊かなる日々 〜吉田拓郎、2003年の全軌跡〜」
田家秀樹・著
ぴあ株式会社 \1,800
http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31387340
http://www.zakzak.co.jp/gei/2004_06/g2004060910.html